マンションの地震対策を考える
毎年1月になると阪神淡路大震災、3月になると東日本大震災を思い出す方が多いのではと思います。
日本は地震があるたびに立ち直り、強くなってきました。
この時のことを教訓に、日々の防災対策を考えたいと思います。
2019年から都市部を中心にマンションの建設数が増えています。
一戸建てと比較すると、「災害や地震に強い」と言われるマンション。しかし、調べてみるとマンションならではの事情に合わせた対策が必要ということが分かりました。
今回は、マンションでの防災対策について詳しく調べてみました。
目次
過去の大震災から知る、マンションで経験する「地震」とは
東日本大震災では、倒壊など大きな被害が出たマンションは、なんとゼロでした。
また、阪神淡路大震災では90%近いマンションが「軽微な被害・無被害」だったという記録が残っています。このことから、一戸建てと比べてマンションは地震に強いと言えると思います。
しかし、阪神淡路大震災は、地震発生時間が夜明け近くだったこともあり、多くの人が就寝中で、家具の倒壊による被害が数多く出てしまいました。
大地震の揺れは、高層階であるほど、長く、大きくなる傾向があります。
「長周期地震動」という、揺れの周期が長い波長を含む地震が発生すると、震源地から数百キロ離れていても、建物全体がゆっくりと、長い時間、大きく揺れることがあります。
筆者の私は、東日本大震災発生時に震源地から700キロ離れた職場にいました。5階建ての免震構造のビルでしたが、船に乗っているような揺れが2分ほども続き、ロッカーや机が大きく横にずれました。
また、建物自体に大きな損害がなくても、電気、ガス、水道が止まってしまって、マンションで生活できなくなってしまったという人が多くいました。
ライフラインが止まってしまったことにより、避難所生活を送ったという人は、東日本大震災で、マンション在住者の約50%、阪神淡路大震災では、約70%になりました。
地震に強いマンションとは
マンションの耐震基準は、大地震が起きるたびに改訂されています。
直近での大きな改訂は、1978年に起きた宮城沖地震をきっかけに見直されたものです。これを新耐震基準と呼んでいます。
その後、1995年に起きた阪神淡路大震災で、その耐震基準で設計された建物のほとんどに大きな損壊がなかったことから、この新耐震基準を守って建てられた建物であればある程度の耐震性がある事が証明されました。
ただし、旧耐震基準だから危ない、新耐震基準だから大丈夫だとは一概に言えないそうです。
旧耐震の年代に建てられたマンションでも、適切な耐震工事が行われていれば新耐震基準と同じ耐震性になっているところもあり、実際そのマンションは東日本大震災でも大きな被害はなかったという例がありました。
一戸建て住宅とマンションとの違いを知って防災対策
マンションは一戸建と比較すると地震に強いのですが、一戸建てとは違う被害もあります。
地上への移動が困難に
エレベーターが止まったり、通路や階段では天井や壁が落下したりして、避難が困難になる可能性があります。
水道が復旧しても、水道が使えないことも
マンションの給水設備が破損して断水したままというケースがありました。
排水管の破損に気づかず、汚水が他層階の部屋に
壁内部の排水管の破損は、外からでは分かりづらいです。それに気づかずトイレの水を流してしまい、他階層に流れ出してしまったというケースがありました。
復旧までの間に起きるトラブルとは
「インフラが復旧までの間、マンションではどんなことが起きるでしょうか。
1.荷物の運搬が困難に
エレベーターが止まってしまった場合、復旧に3週間かかったというケースや、大きな損傷があった場合は半年以上かかったという例もあります。
高層階の住民の中には、自宅に戻れない、自宅から出られないという方も出てきます。
そして、荷物は階段で運ばなければなりません。断水した場合、水の運搬も階段でとなります。
このため、マンション、特に高層マンションでは、防災用品の水と食料の量を十分に確保しておきたいです。
2.生ゴミの保管や管理に苦労
交通機関やごみ処理施設の復旧まで、ゴミの収集がストップします。多くの住民が集まって住むマンションでは、日々発生するゴミは大量になります。
停電で冷蔵庫での保管が難しくなると生ごみの量も増えます。マンション管理組合で相談し、敷地内で保管する場所を確保するなど住民同士の協力が必要です。
「在宅避難」に備えよう
東日本大震災では、避難所に人があふれかえっていて、高齢者や小さな子供を持つ家庭はいづらかったこと、マンションの被害が少なかったことが理由となり、自宅避難を選んだ人が多数いました。
防災用品、非常食が確保してあれば、自宅での避難ができます。
マンションに住む人は、自宅避難の準備をしておきたいです。
では、どんな準備が必要なのでしょうか。
家具の固定をしっかり。特に横揺れ防止対策を
マンションの高層階では、地震の際に、長く大きくゆっくりとした揺れが続きます。家具は、転倒だけでなく、横揺れや移動が起きやすくなります。家具は、転倒防止の対策をしましょう。
ホームセンターでグッズが沢山販売されています。また、部屋のドアから玄関までの通路が家具でふさがれていないかも確認しておきましょう。
食料・水は最低3日分、できれば1週間分を準備
飲料水は、一人一日平均3リットルが必要と言われています。それを、1週間分確保しましょう。
食料品は、普段食べ慣れているものの中から日持ちが良いもの、他の食品と組み合わせられるものを選ぶことがおすすめです。真空パックのごはん、缶詰、漬物、塩や味噌のほか、ようかんやクラッカーなどのおやつになるものも入れておきます。
非常食用として何年も保存しておくのではなく、普段食べているもので、日持ちするものを少し多めに買っておく、「ローリングストック」がおすすめです。
簡易トイレは必需品
断水や停電してしまうと、水洗トイレは使えません。また、マンションでは、外から見て大きな被害がないようでも、壁の中の排水管が破損してトイレやお風呂の排水ができなくなったり、高層マンションでは給水設備が破損して断水が長引き、トイレ・お風呂が使えない期間が長くなったりというケースもあります。
このため、簡易トイレの準備が必須です。
「おしりにやさしい簡易トイレ」は、便座式トイレと似た座り心地で、子どもやお年寄りも抵抗なく使えます。そして、においを抑える凝固剤がついています。トイレのストレスは、日常生活に大きな影響を与えます。だからこそ、普段の生活に似た使い心地のものをおすすめしたいです。
共有部の点検も忘れずに
出入り口付近に車やバイクが駐車してあったり、以前の住民の人の荷物が置きっぱなしになっていたりなど、共有部にモノがあることで避難通路がふさがれて、住民全員の避難に支障がおきてしまうことがあります。玄関扉、通路、階段、エレベーター、塀など、共有部の避難経路が確保されているか、普段から点検が必要です。
まとめ
新耐震基準のマンションは一戸建てに比べて地震に強い
マンション特有の地震被害や問題がある
エレベーターの停止が長引くと、高層階からの移動や荷物の運搬が困難になる
在宅避難の準備をしておく
食料・飲料水の確保、簡易トイレの準備を十分にする