土砂災害が増えている。どんな対策が必要?
ここ最近、豪雨災害、土砂災害が急に増えたと感じている方が多いのではないでしょうか。
2021年の静岡県熱海市での地滑り被害は、いまだに安否が分からない方もいるほど甚大なものでした。
同年に広島県、長崎県と立て続けに大雨と土砂災害が続きています。
短時間に猛烈な雨が降って、大きな地滑りが起きて住宅が押し流されたり、治水をしているはずの川が氾濫して広い地域で床上浸水が起きたり、といったニュースを何度も見聞きしました。
特徴的なことは、大雨による被害だけでなく土砂災害も多発していることです。今後さらなる気候の変動により、降雨量が増加する可能性が高いことから、政府は新しい法律を作りました。
梅雨の時期を前に、大雨や土砂災害の対策、新しい法律について知っておきませんか。
目次
土砂崩れの原因の主なものは2つ「伐採」「放置」
静岡県の土砂崩れの原因は、森林の伐採が引き金になったと言われています。
宅地造成やソーラーパネルの設置などで、森林の伐採が進んでいることは事実です。
そこに、近年の異常気象で過去に例のないレベルの大雨、集中豪雨が何度も降るようになったため、水を貯められなくなった山が一気に崩れ、大きな被害になってしまっています。
森林の伐採は土砂崩れにつながる、ということは誰でも「そうだろうな」と納得するのではないかと思います。
しかしここ数年は、森林がある場所でも、大きな土砂崩れが起きています。
その原因は、森林の「放置」です。
実は、50年ほど前から日本の森林面積はほとんど変わっていません。しかしその森林とは、天然林ではなく人工的に作られた林なのです。
一時期、政府が林業を推し進めたため人工林が増えたのですが、その後外国製の安い木材に押されて廃業や高齢化が進んだことから、林業従事者が減っています。そのため手入れされず放置されている人工林が全国各地に増えているのです。
放置された人工林は、どうして危険なの?
手入れがされていない人工林は、間伐や下草刈りがされないため、太陽の光が地表まで届きません。
そうすると背の低い植物は根がしっかり張れないため育たくなります。
そこに雨が降ると、植物の根が水を吸い込まないため、水は地面に浸み込まず表面を流れて土や岩を押し流し、土砂崩れになってしまいます。
手入れがされた人工林ならどうなるの?
間伐、下草刈りされた人工林は、背の高い樹木と低木植物がともによく育ち、しっかりと根を張ります。
枯葉を含んだ土壌ができるため、雨水が降るとゆっくりと地中に浸み込んで、水を貯めこむダムのような役割をします。そして植物の根が土や石を掴み、流出を防ぎます。
2021年から治水対策が変わった
今後もさらなる気候の変動で雨が増える可能性が高いことから、2021年5月に「流域治水関連法」が公布されました。その年の7月からその一部が施行されています。
これまでの法律では、堤防やダムなどを作って洪水を防ぐ対策が取られていました。しかし、もはやこれでは限界があることから、大きく方針を転換しました。
「流域治水」とは、水が溢れることを前提にし、水を貯められる場所を多数確保したり、洪水などの危険がある場所に人が住まないようにしたりするなど、あらゆる方面からの対策を組み合わせることで被害を小さくしようというものです。
新しい治水対策の3つの柱とはどんなもの?
さまざまな取り組みが検討されていますが、大きく分けて3つの施策があります。
①水を貯められる場所をたくさん作る
- グラウンド、地下、施設の所有者などに貯水施設を作ってもらうよう促します。その建設費用に補助金を出します。
- 川沿いの土地の開発を制限したり、都市部の緑地を守ったりすることで、水を貯められる場所を減らさないようにします。
②危険な場所になるべく住まないようにする
- 浸水被害が何度も起きている土地を指定し、そこでの住宅の新築を制限したり、建物の高さは、部屋に水が入らない高さになるように指定したりします。
- 安全な土地への集団移転をしやすくします。
③地域の避難施設を増やす
- ショッピングセンター、マンションなどで、緊急時の避難スペースを設置する場合に、その建物の所有者に補助金を出したり税金面で優遇したりします。
参考:NHK解説委員室 変わる水害対策~流域治水をどう進める
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/451749.html
土砂災害から身を守るために知っておくこと
土砂災害から身を守るためには、日ごろからの備えが肝心です。ここでは土砂災害から身を守るために知っておきたいことをまとめました。
「人とペットの災害対策ガイドライン」では、どんなものを準備すればいいかリストが掲載されています。重要度の優先順位も載っていますので、状況によって選べるようになっています。
目につくところに貼っておくといいと思います。
① ハザードマップで住んでいる地域の危険度をチェック
土砂災害の恐れがある土地は「土砂災害警戒区域」や「土砂災害危険箇所」とされています。国土交通省砂防部のホームページや、住んでいる自治体のホームページで確認してみましょう。
国土交通省砂防部のホームページ
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/index.html
② 土砂災害の前兆現象を知っておく
土砂災害が起きる前には、何らかの前兆現象が現れることがあります。この前兆に気づいたら、自治体などに知らせていち早く対策しましょう。
- 小石がパラパラ落ちてくる
- 崖にひび割れができている
- 崖から水が湧く
- 地鳴りがする
- 湧水が枯れたり濁ったりする
- 山の木が傾いた
- 腐った土のにおいがする
- 雨が続いているのに川の水位が下がった
③ 防災グッズ、避難グッズの点検は今の時期に
大雨の増える今の時期に、防災グッズの点検をしておきましょう。
マンションに住んでいる場合は、2階以上の上層階に移動する「垂直避難」や自宅避難の方が安全な場合もあります。その場合は、自宅での避難を想定して食料や水の確保、自宅で停電になったときの対策を準備しておきましょう。
停電になった場合は、水洗トイレの水が流れなくなってしまいます。また、浸水時は排水溝から水が逆流してしまうこともあります。
自宅避難に備えて、簡易トイレもぜひ準備しておきましょう。
まとめ
土砂崩れの原因の主な原因は、樹木の伐採と、人工林の放置
今後も増え続けると予想される大雨、土砂災害の対策のため、治水対策が変わった
新しい治水対策は、貯水池を作る、危険な地域への居住の制限、避難施設を増やす
土砂災害の対策に覚えておくこと3つ「ハザードマップのチェック」「土砂災害の前兆を知る」「避難グッズの準備と点検をする」